『日本のエネルギー政策を問い直す──水の記憶から未来を考える』

序章 岩村ダム──水の静けさに心を預けた日々

第1回 福島を風化させない──“見える被害”と“見えない被害”

第2回 CO₂問題と世界の潮流──再エネは主力電源へ

第3回 日本の再エネの本命は水力である──国土の力を思い出す

第4回 原発推進に傾く日本──その理由と危うさ

第5回 未来への提言──技術革新と持続可能なエネルギー政策へ

終章 水の記憶を未来へ──岩村ダムから始まった旅の終わりに

🌿 序章 岩村ダム──水の静けさに心を預けた日々

木曽川の上流域に、岩村ダムという小さなダムがある。

若い頃、私はよくそこへ車を走らせた。
岩村城址を抜け、支流沿いの緩やかな流れに寄り添いながら、

山の匂いと水の音に心を預ける時間が、
いつしか自分を整えるための“習慣”になっていた。

月に二度、三度。 季節の移ろいを確かめるように、私は同じ道を辿った。
春の淡い桜、夏の濃い緑、秋の落ち葉、冬の透明な空気。

岩村ダムは大きくはないが、 あの水面には、
私の心のざわつきを静かに吸い取る力があった。

岩村ダムを思い出すたび、私は考える。
日本は、国土が育んだ“水の力”を、いつから忘れてしまったのだろうか。

山に降る雨が川となり、谷を削り、 やがて人の暮らしを支えるエネルギーへと姿を変えてきた。 その営みは、私たちの祖先が何百年も前から受け継いできたものだ。

けれど今、国のエネルギー政策は、 その“国土の記憶”から遠ざかろうとしている。
福島の痛みが癒えぬまま、原発推進の声が再び大きくなる。

CO₂問題は待ったなしで、世界は再エネの技術革新へと舵を切っている。
それなのに、日本はなぜ、水力という確かな資産を見つめ直そうとしないのか。

この連載は、あの小さなダムから始まる。

私が水の静けさに救われたように、
日本もまた、水の力を思い出すべき時に来ているのではないか。
その思いを胸に、これから五つの章で、
日本のエネルギー政策を静かに、しかし確かに問い直していきたい。

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